子供の頃によく言われたしつけの言葉がある。

「誰がみていないくてもお天道さまがみている」と。

子供心にこの教えは悪いことに対する抑止力になった。

最近、この言葉が真実である瞬間に出会った。

 

最高の接客を行うガソリンスタンド

知人に最高の接客を行うガソリンスタンドの店員がいると聞いた。

彼はその接客のとりこになったらしく、金武に住んでいながらその店員がいる宜野湾のスタンドでわざわざオイル交換をしにいっていたそうだ。

ある日、その店員が見当たらないため、他の店員に尋ねたところ那覇のスタンドに異動になったとのこと。

彼はその後、わざわざ那覇のスタンドにまで行くようになったそうだ。

そして、客の方なのにどうしても「ありがとう」を言いたくなると。

僕は沖縄のガソリンスタンドの接客にはあまりいい思い出がない。

このブログでも失礼な接客の話を書いている。

◎沖縄ガソリンスタンド店員に見る沖縄の県民性

そのため、そんなにすごい接客をする人なら是非行ってみたいと思った。

 

沖縄のガソリンスタンドにもカリスマ店員がいた

早速、その日の夕方にそのガソリンスタンドに行ってみた。

予想に反してセルフ給油のガソリンスタンドだった。

というのは「すごい接客」が評判なので給油をしてもらうイメージだったからだ。

給油をしながら店員を探すと、聞いた話と一致しそうな店員さんがいた。

このままセルフ給油をしているだけだと、その店員さんと接触の機会がない。

僕が給油中に妻に事務所に偵察に行ってもらうことにした。

僕は給油を終え、事務所に妻を迎えに走った。

帰りの車中で妻の話を聞いた。

やはり最初に見つけた店員さんが噂の方だった。

妻はオイル交換の話をその店員さんとしたようだ。

妻曰く、「とても感じのいい方だったけど、すごい接客というのはわからなかった。」

「そうか。オイル交換をしてみないとわからへんかもね。」

この日はそのまま帰路に着いた。

沖縄のガソリンスタンド

 

すごい接客の店員にあうために起きた奇跡

自宅まで半分程帰った頃に僕はあることに気がついた。

それはスタンドでお釣りを取り損ねたことだ。

この日はレギュラーガソリンを3000円分入れて、確か5000円札を入れたハズだ。

2000円のお釣りを受け取った記憶がない。

いつもはカードを使うのになぜかこの日は現金払いにしたのだ。

財布の中を覗いても、あるはずの千円札二枚がない。

「しまった」

僕たちは踵を返し、先ほどのガソリンスタンドに舞い戻った。

一縷の望みと半分あきらめの気持ちで。

スタンドに戻り、店員をつかまえて確認してもらった。

この店員は例のカリスマ店員ではないが、全速力で事務所へ走ってくれた。

そして、全速力で大汗をかきながら僕たちのいる場所へ戻って来た。

「いま店長が防犯カメラを確認していますので、少しお待ちください。」

店員に確認すると、このスタンドはセルフ給油でよくある「釣銭機」のタイプではなく、給油機から給油が終わると釣銭が出てくるタイプ。

そのため、僕たちの次にその給油機を使った人が取り忘れた釣銭に気がつくハズだ。

時間がかかると言われたので僕たちは事務所に行ってみた。

なんと対応してくれた店長さんが噂のカリスマ店員だった。

店長さんは僕たちにも見えるところで防犯カメラをチェックしていた。

その防犯カメラには犯罪の瞬間がしっかりと映っていたのだ。

僕たちの次に当該給油機を使用したのはレンタカーに乗って来たおばさまだった。

このおばさまは給油機のお釣りの出口に手を伸ばすと「迷うことなく」そのまま何かを受け取り財布にしまった。

この何かが札束なのかは判別不能ではあったが、この一連の動作が示す意味を店長は説明してくれた。

「警察に通報しますか?」

店長はお店側が主導するのではなく、客側の意思を尋ねた。

そのうえで、レンタカー会社が特定できたとして、隣のレンタカー屋に走って確認に行ってくれた。

帰り道にそのレンタカー屋を確認したら、隣と言いながら400~500メートルほど離れていた場所にあった。

残念ながら隣のレンタカー屋の車ではなかったが、その対応にはすごく感心させられた。

おばさまの車はレンタカーであることはわかったが、防犯カメラではレンタカー屋までは判別できなかった。

このガソリンスタンドはレンタカーが車を返す直前にガソリン給油のために寄ることが多いようだ。

ということは、このおばさまは旅行客で既にレンタカーを返して帰路についた可能性が高い。

僕たちは警察への通報はしないことに決めた。

たった2000円のお釣りの取り忘れ、客側の不注意での出来事だ。

それにもかかわらず、スタンドの店員の全速力での対応。

親身になって探してくれた店長の態度。

こうした最高の接客を2000円を取り忘れることで遭遇できた。

これはまさに小さな奇跡のような出来事に思えた。

逆に2000円を取っていってしまったおばさまは、たった2000円で心に負債を追ってしまっただろう。

「誰が見ていなくてもお天道様がみている」

しつけで使われたこの言葉も、防犯カメラ網が整備されてきた現代では説得力のある言葉となった。

人工衛星からも人間の行動は把握されつつある。

僕自身、もう何十年も前の出来事だがコンビニのATMに前の人が残していったと思われる7千円を拾った経験がある。

この時は迷わずコンビニの店員に届けた。

もし、あの時魔がさしていたらATMは当然防犯カメラが監視しているだろうし、後ろに手が回っていたことだろう。

もちろん、お金を落としてしまった人、忘れてしまった人のことを考えれば誰が見ていようがいまいが、届けるのは人としての当然の行為だろう。

いずれにしても、僕にはお釣りを忘れたことは、最高の接客をみたいという僕たちの願いを叶えた天の采配に思えて仕方がなかった。

起きた瞬間は悪い出来事に思えたが、とても清々しい気持が芽生えたのだ。

「いいものを見せてもらった」

沖縄のガソリンスタンドで起きた小さな奇跡に、二人とも不思議な満足感で帰路に着いた。